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卵殻由来素材で実現する高耐久プラスチックと紙

Yoshiko Ohira by Yoshiko Ohira
02/06/2026
in Clean Tech, Earth
0
Home Earth Clean Tech
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JStories ― 国内の鶏卵の年間消費量は約420億個、260万トン以上に上る。使われた鶏卵の殻は年間約25万トンにもおよび、大半は処分費用をかけて廃棄されている。

この廃棄される大量の卵殻に着目し、卵殻と卵膜を分離、乾燥、粉砕する独自技術を開発したSAMURAI TRADING(埼玉県上尾市、櫻井裕也社長)は、卵殻を材料に食器や紙などのエコ素材を製造。さらに、モノを作るだけに留まらず、企業や自治体と連携しSDGs活動を広げている。

卵殻事業では、製造過程の一部を福祉事務所に委託して障害者に雇用を生み出す一方、収益の一部でフィリピンでのマングローブ植林活動を推進。廃棄物や温室効果ガスなどの排出量を限りなくゼロに近づけるゼロエミッションを目指した事業を展開している。

可燃ごみとして処理できる「卵殻プラスチック」

現在プラスチック製品の中には、石油由来の樹脂に米や木片などを配合したものもあるが、可燃ごみとして扱うには全体の51%が自然由来のものである必要があり、安定的な生産の難しさもある。

櫻井さんは以前に経営していたデザートの製造・販売会社で大量に廃棄していた卵殻に新素材としての可能性を見出した。卵殻を微粉砕しプラスチックの材料として60%混ぜれば、使用する樹脂を減らせるだけでなく、環境負荷を軽減し可燃ごみとして処理できる。

そうして開発されたバイオマスプラスチック「PLASHELL」は温度を上げると溶け、冷やすと固まり、再び熱を加えると溶けるという性質を持ち、食品トレイなどに活用されている。「開発には多くの課題があったが、デザートの製造技術や知識が役立った」と語る。

原材料の51%以上を自然由来のものにすることで、可燃ごみとして処理できる「PLASHELL」      写真提供:SAMURAI TRADIND (以下同様) 

耐久性の高い食器や紙も開発

同社では、「PLASHELL」とは逆に熱硬化性を活かして陶器のような質感のある食器「SHELLMAINE」のほか、名刺や紙袋などの紙製品「CaMISHELL」などを製品化した。

PLASHELLは従来のメラミン食器と異なり、電子レンジでの使用ができ、割れにくいことから、子ども用の食器にも多く使われているほか、海洋プラスチック問題に関心の高い水族館での採用も増えている。丈夫で破れにくいCaMISHELLは、多くの企業、金融機関、自治体などの名刺や封筒、パッケージ包材などに採用されている。

陶器のような質感を保つ「SHELLMAINE」(写真左)。近年は海洋プラスチック問題から環境問題に関心の高い水族館での採用も増えている。写真中央は、新江ノ島水族館で採用しているランチプレート

これらの製品は、2019年に埼玉県主催の「渋沢栄一ビジネス大賞」で奨励賞、翌年は大賞を受賞。2年連続の受賞をきっかけに、埼玉県の経済同友会や金融機関とのつながりができた。講演会などの機会を得ることで同社のSDGsへの取り組みに賛同する企業、団体が増え、環境に特化した事業はさらに拡大した。

同社では原材料となる卵殻の粉砕・乾燥を複数の割卵業者に委託しているが、自社で製品化する分とは別に、製紙工場向けに用意した原材料は直接、割卵業者から出荷している。「輸送頻度が増えると二酸化炭素(CO2)が多く発生してしまう。極限までCO2の排出を減らすことに徹しないと、この事業をやる意味がない」と櫻井さんは言う。

これまで卵殻の処分に廃棄量を払っていた企業にとっては、卵殻の粉砕、乾燥までを行うことで収益に代わり、企業としてSDGsへの貢献という価値も生まれる

さらに同社では、「PLASHELL」の製造過程の一部を福祉事業所に委託。「障害者が生きがいや、やりがいを持って働けるよう売上の還元率を増やし、それまで作業に支払われていた時給の3倍を目指している」という。

日本にも環境の時代が来ると直感

同社が環境に特化した事業をスタートさせたのは、アメリカのスーパーで櫻井さんが抱いた違和感がきっかけだった。

2005年に訪れたアメリカのスーパーは「日本のような明るく、華やかな雰囲気はなく、何となく薄暗くて全体が茶色い。卵やサンドイッチのパッケージもほとんど茶色い紙」だった。しかし、その違和感はすぐに消えた。「すでに環境へ意識が向いていることが店づくりからも分かった」からだ。

加えて、現地で環境問題を問いかけるドキュメンタリー映画を観た時に映画の内容とスーパーで感じた違和感がつながり、「環境を意識した社会が近い将来、必ず日本にも来ると直感した」という。

廃棄していた卵殻を再資源化した事業を展開する「SAMURAI TRADING」の櫻井裕也社長

櫻井さんは帰国後、その思いをすぐ行動に移した。まず着手したのは、大量の卵殻を粉砕し、肥料にしたり、運動場のライン材にしたりする事業だった。「自分が正しいと思ったことをやり始めたのですが、まだSDGsの概念などがない頃。環境活動に取り組む企業も少なく、周りには全然認めてもらえなかった」と振り返る。

大きな転換期となったのは2011年の東日本大震災だった。大量の水や食料、洗濯機などを被災地に運び、翌日から炊き出しのボランティアを始めた櫻井さんらは、巨大地震が現地に残した傷跡を目の当たりにした。「自然の脅威には太刀打ちできない。とにかく、いますぐ地球環境の保全に本気で取り組まないと取り返しのつかない世の中になる」と、環境に軸を置いた本格的な事業に舵を切った。

埼玉発、官民一体のSDGs推進「エコ玉プロジェクト」を始動

櫻井さんはエコ素材の開発事業と並行して、SDGsの普及、啓発にも力を注いでいる。同社と埼玉県内に事業所を持つカネパッケージ(同入間市)、ベジテック(川崎市)の3社が中心となり「エコ玉プロジェクト」を始動。2019年にスタートした同プロジェクトに賛同する関係機関は現在、50社を超える。

卵殻製品の普及とともに、フィリピンのセブ島周辺にマングローブを植林し、生態系の維持や台風や津波に強い防災・減災に貢献する活動を継続。自治体や企業の協力のもと、廃食油の回収、再生による資源循環を目指す取り組みなども進めている。

フィリピン政府や現地に生産拠点を持つカネパッケージの協力を得てセブ島に植林を続ける櫻井さん(写真右)。これまで1500万本のマングローブを植樹している 

事業やプロジェクトを続ける中で、櫻井さんは自分が60歳を迎える3年後を見据えている。「あちこちで戦争が起こる今の世界情勢を考えると、世界が持続可能な開発目標として取り組んでいるSDGs活動も、次の世代につなぐことができるか危うい。この危うさを回避するには、教育を充実していくしかない」

櫻井さんは3年後には現在の事業を分社化し、自身は海外での環境教育に力を集中していく考え。「腰を据えて途上国での教育にこれから多くの時間を費やしていきたい。そのための学校建設にも目を向けている」と語った。

記事:大平誉子 | JStories

編集:北松克朗 | JStories

トップ写真: Envato 提供

この記事に関するお問い合わせは、jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。


本記事の英語版は、こちらからご覧になれます。

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