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英文ジャーナリストからスタートアップの起業家に転身した私が、なぜ再びジャーナリズムに戻りJ-STORIESを立ち上げたのか

Takanori Isshiki by Takanori Isshiki
02/09/2024
in Deals, Ecosystem Support, EdTech, Media, Social Impact, Society
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JSTORIES ー 2022年4月の開始以来、もうすぐ2周年を迎えるJ-STORIES。日本初のソリューション特化型メディアとして、世界の社会問題を解決でき得る日本のイノベーションや画期的なアイデアなどを、果敢に国内外に情報発信をしてきた。今回は、このJ -STORIESの創始者であり、編集長でもある前田利継氏に、自身がジャーナリズムに目覚めたきっかけ、ジャーナリスト時代、またジャーナリズムを離れて起業家として取り組んだアプリ開発など、J-STORIESに至る道のりについて語ってもらった。全3部シリーズの1回目は、前田編集長がジャーナリズムに目覚める学生時代の話を聞いた。

(インタビュー収録:2023年12月、J -STORIES編集部にて)

プロフィール:前田利継 (Toshi Maeda)

ジャーナリスト・メディア起業家。ジャパンタイムズ、AP通信、ロイター通信などの国際メディアで記者、プロデューサー、特派員を計15年間務めた後、株式会社パシフィック ブリッジ メディア アンド コンサルティングを設立。動画制作、ライブ配信、多言語での国際イベントなど、企業やメディアなどのグローバルな情報発信を総合的にサポート。2022年に「J-STORIES」を立ち上げる。東京生まれ。

Q:本日は、前田編集長がなぜ国際メディアで活躍するジャーナリストを辞めて、起業を思い立ち、その後に、一度は手放したジャーナリズムに戻って、J-STORIESを立ち上げるに至ったのか、そのいきさつや、ライフストーリーについて伺えればと思います。どうぞよろしくお願いします。

前田:はい。よろしくお願いします。

オフィスでスタッフと話す、前田編集長     高畑依実 撮影

英語を全く話せなかった高校時代にCNNを見て

Q:まず、前田さんが記者として活躍される以前の話を聞かせてください。どのような学生で、なぜ、ジャーナリストを志したのでしょうか?

前田:生まれは、東京の多摩地区、いわゆる東京の田舎です(笑)。18歳まで普通に地元の公立学校通いで、海外とは何も縁のない生活を送っていました。

Q:そうなんですか?流暢な英語を話すので、若い頃から、海外暮らしが長いのかと思っていましたが・・

前田:当時は英語など全く話せませんでした。ちゃんと聞いた事も、話した事もありません。ただジャーナリズムには興味があって、小学校の頃から壁新聞の編集長や放送委員会の委員長をしていました。本格的に記者の仕事がしたいと思ったのは高校3年生の時、CNNを見た時ですね。「自分も世界の各地を飛び回ってテレビで伝える仕事がしたい! ラリー・キングのように世界中の人たちをインタビューしたい!」と思うようになりました。

都内の公立高校では、ラグビー部に入部して、練習に明け暮れていた。    前田利継 提供(以下、同様)

Q:でも英語は全く話せなかった?

前田:全くです(笑)。まずは英語を学ぶ為、アメリカの大学に行こうと思ったわけですが、家庭が裕福だったわけでもなく両親からは大反対されました。

Q:普通の家庭であれば、なかなか自費で留学は難しいですよね。でも諦めなかったんですね?

前田:はい。高校を卒業してから1年間、日本の大学に入学後に、奨学金や交換留学制度などを駆使して、なんとか留学できる学校はないか諦めずに探し続けました。その結果、アメリカ・テネシー州の小さな大学に19歳の時に交換留学で入学することができました。

「カルロス」になったアメリカ留学時代

留学したテネシー州の大学の寮にて

Q:なるほど。念願の留学先アメリカで、英語を覚えた、というわけですね?

前田:ところが、話はそう簡単ではなくて、アメリカンな生活が待っているかと思いきや、寮のルームメートや現地での友人の多くは、英語を学ぶために来ていた中南米(ラテンアメリカ)の人たちでした。彼らとの日常会話は英語が通じず、スペイン語で行う必要がありました。そのため、英語よりスペイン語を先に覚えてしまいました(笑)。

Q:まさか留学先で最初に覚えたのはスペイン語でしたか!

前田:はい。現地でスペイン語の授業を取って勉強しました。私は、現地の日本人から「カルロス」と呼ばれるようになり、アメリカ文化にどっぷり浸かるはずが、ラテンアメリカの文化とノリに染まったのです。もちろん英語も勉強しましたし、アメリカ文化も沢山吸収したのですが、当時、自分に一番影響を与えたのは中南米の文化だったと思います。もっと彼らの文化を知りたいと、20歳の夏には、留学先のテネシー州からポンコツの車でひたすら南進して、中南米各国をどこまでも巡る旅に出ました。

Q:なんと。仲良くなっただけで満足せず、実際に南米に行きましたか。

前田:はい(笑)。1993年のことで、まだインターネットや携帯電話などない時代でした。日本の100円ショップにあたるアメリカの1ドルショップで買った「1ドルコンパス」を天井につけ、「S(South)」の文字が向く方向にただただ突き進みました。途中の国々では、アメリカで出会った現地の友人の家を訪ね、泊めてもらったりもしました。

「ヤマト」と命名された、米国留学中に乗っていた古いスバルのステーション・ワゴン。車軸やギア、冷却装置などが何度も壊れながらも、米国からアルゼンチンまでの16,000kmを陸路で走り切った。写真は、ペルーからアルゼンチンに向かう途中のチリの高山地帯の山道で

Q:コンパスで南へ、というのは携帯やGPSがある今では考えられない話ですね。それでどこまで行ったのでしょうか?

前田:約3ヶ月間かけて、陸路で1万6000キロ、中南米13カ国を走り抜き、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスまで辿り着きました。アメリカから中米を超え、南米大陸を縦断したことになります。

Q:南米縦断!それは凄い体験ですね。

前田:旅で経験したことはあらゆる意味で自分の中で大きな糧となっていますが、今思えば、それが自分のジャーナリズムの原点だったようにも思います。

中南米旅行でジャーナリズムの使命に目覚める

Q:ジャーナリズムの原点?どういうことでしょうか?

前田:その旅の中で見たこと、感じたことは沢山ありますが、得に目についたのは、子供の貧困や警官の汚職、現地の人たちの人懐っこさや優しさなどで、それらはどれもこれまで日本やアメリカでは体験したことがなく、本やテレビでは知り得ないことばかりでした。これらの事を目撃・体験した自分は、自分が知ったことを世界に伝える義務がある、自分はそのような仕事をしたい、と強く思うようになったのです。

Q:留学先で、ラテンアメリカの文化を知ったことがジャーナリストになる大きなきっかけだったんですね。

前田:もちろん、アメリカで学んだ影響も大きいのですが、自分にとって転機となったのは、日本ではあまり報道されない中南米の社会や物の見方などを直接、知ったことだったと思います。

ペルー南部で車が壊れた時に修理してくれた修理工とそのご家族と (1993年7月)       

英語をどうやって身につけた?

Q:ところで、話が逸れてしまいましたが、英語が全くできなかった前田編集長が、どうして留学し、その後、英語で記事がかけるほどのレベルにまで上達できたのでしょうか?当時どうやって勉強したのか、教えてください。

前田: 17歳の頃、たまたまアメリカで書かれた潜在意識に関する本を読んでいて、まずは自分の潜在意識に英語を母国語のように話している自分の姿を強くイメージし続けました(笑)。

Q:潜在意識!できる自分をイメージすることが大事なんですね!でもそれだけでは上達しないですよね?何か有効な勉強法もあったんじゃないですか?

前田:高校時代までは英語を話す知り合いさえいなかったので、月並みですが、出来るだけテレビやラジオまたは市販のカセットテープなどで英語を聴き、読むときは出来るだけ声に出して読むようにしていました。

Q:声に出す!やはり声を出して読むことなんですね。

前田:大学を卒業して英語で記事を書き始めた頃は、本当に見よう見真似で、事実関係を間違えないように記事を書くだけで精一杯でした。当初は編集デスクやネイティブのコピーエディター(校正担当)に自分の書いた記事をたくさん直されました。どのように直されたかを毎回良くチェックして、「before」と「after」の比較をすることで、段々と記事のスタイルやニュース的な表現を覚えていきました。

Q:なるほど。前田編集長も新人記者時代には、試行錯誤を繰り返していたのですね。

前田:ロイター時代には、テレビニュースのリポート(いわゆる「完パケ」)も英語で作っていましたので、自分で吹き込んでオンエアされたナレーションを必ず後で聞き返し、もし発音が不明瞭だった感じたところがあれば、後でその部分を意識的に練習して発音を改善するようしました。

Q:自分で話した音声を確認して、繰り返し練習するという、本当に地道な努力の積み重ねなんですね。魔法の勉強法があるのかと期待してしまいましたが(笑)

前田:振り返ってみると、好きなニュースの仕事をしながら英文記事の書き方や発音まで学ばせてもらうことができたのですから、大変ありがたい経験でした。とはいえ、海外の読者や視聴者にニュースを届けるプロとしての責任上、事実関係の確認は当然のこと、英語の文法や語彙の選択、発音などには常に細心の注意を払っていました。自分なりに高い基準を設けていましたので、アメリカでは英語の音声学を積極的に学んだりもしました。ですので、まさに自分のような英語を母国語としない方々に向けて英語の発音を教えることには、実はかなり自信があるんです(笑)。

Q:自分が苦労したからこそ、教えることができるということですね?

前田:はい。ニュース記事というのはパターンがあるので、英語ネイティブでなくても努力をすれば書けるようになれます。難しいことを単純化して書く、というもの英語ニュースの特徴ですし、シンプルでわかりやすい表現の方が好まれることが多いこともその背景です。もし難解な語彙や表現を必要とする英文学や小説を書けと言われたら、ギブアップしていたでしょう(笑)。

ジャパンタイムズの記者になって見えてきた日本と海外のジャーナリズムの違い

ジャパンタイムスの国会担当記者時代に父親の利親(としちか)さんと

Q:それで、帰国後には、日本の英字新聞ジャパンタイムズの記者として活躍されるわけですね?

前田:海外報道機関の東京支局やニュースのプロダクションでの下積みを経て、ジャパンタイムズの記者になりました。政治担当となり、小泉(純一郎)総理の誕生などの取材をしました。日本の報道機関の政治記者達と一緒に政治家の自宅に「夜討ち朝駆け」をしたりして、社会だけでなく「日本のメディア業界」がどのように動いているのかを学べた時期でもありましたね。

Q:海外メディアに所属する立場として、日本のメディア業界についてどのような印象を持ちましたか?

前田:良くも悪くも海外メディアと日本のメディアには違いがあると感じました。例えば自民党や、政府の役人が何らかの発表を行い、そこで伝えられた「言葉」や「表現」をそのまま使って書くのが、日本のメディアで良しとされる報道の仕方です。一方で、同じ発表を海外のメディアが伝える時には、発表文をそのまま直訳しても認められません。そんなことをしたら悪いジャーナリズムの見本みたいな扱いをうけます。発表があったら、社会的な背景も含んだ全体像をまず掴んで、読者にとってどのような意味があるのか、自分の言葉に落とし込んで、解釈した「言葉」で書きます。それが英語のメディアでは普通のことですし、そうしないと記者としての仕事をしたことにはなりません。

Q:なるほど。同じ日本にいて、同じことを取材していても、海外媒体の記者は、日本メディアの記者と全く同じことをしているわけではなかったのですね。

前田:やはり、それは何をよしとするかという文化の問題もありますし、また、ただ単に言語を変換して伝えるときに、直訳しても必ずしも正しく伝わらないので意味を汲み取って書き直しせざるを得ないという事情もあります。

海外の読者に対して日本のことをわかりやすく書くためには、相手が日本のことをほぼ全く知らないというくらいの前提になって、背景説明も踏まえて出来るだけ分かりやすく、かつ興味を持ってもらえるように伝えることも意識していました。

Q:確かに大半の海外の人は、日本の文化や、複雑な政治体制を知らないでしょうし、前提としてこういう歴史的な背景があるんだ、みたいなことを説明しないと日本の記事を直訳しただけでは理解できないことはあるでしょうね。

前田:他にも英語の記事のスタイルとして「逆三角形(Inverted pyramid)」の書き方と呼ばれますが、まずは最も大事な要素を最初のパラグラフにまとめて書きます。その後、そのニュースが読者や社会にどのような影響を与えるか、どのようなインパクトをもたらすのかという「Nut Graph(その記事を読むべき理由を一言でまとめたパラグラフ、とでも言いましょうか)」を出来るだけ上の方に、3パラグラフ目あたりにまでに入れます。ですので、どんな記事を上から3パラグラフほど読むだけで、大体概要は把握できる構成になっています。細かい話になってしまいましたが、そのようなスタイルで簡潔に記事を書くことはいつも心がけていました。

Q:そうやって、順調に記者として成長していた前田編集長ですが、6年目に退社します。これは何故だったのでしょうか?

前田:ちょっとカッコつけて表現すると、日本ではある程度の記者経験を積んだので、欲が出てきたというか、次は英語ジャーナリズムの世界における「メジャーリーグ」に挑戦してみたい、という気持ちでした。

Q:メジャーリーグ?

ー英語が全く話せなかった高校時代から、念願の留学を経て、見事英字ジャーナリストとなった前田編集長。第2部では、国際ジャーナリストとして本場のアメリカで記者として挑戦、そして記者として活躍する最中に訪れた転機についてたっぷりと語ってもらいます!

(第1部 終わり。第2部へ続く)

記事:一色崇典 編集:北松克朗

トップ写真:前田利継 提供

本記事の英語版は、こちらからご覧になれます

この記事に関するお問い合わせは、 jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

Tags: Career DevelopmentCross-Cultural CommunicationEnglish EducationInternational RelationsJ-StoriesJapan startupsJournalismLatin AmericaMedia EntrepreneurshipReutersSocial Activismsolutions journalismThe Japan TimesToshi MaedaUC Berkeley
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